地元にひっそりとたたずむ 富士塚のコアな楽しみ方
7月1日は富士山の山開き。信仰の山・富士山を模した関東各地の「富士塚」を巡り、その魅力を発信している有坂蓉子さんをたずねました。
ロングヘアにハンチング帽を小粋にかぶった有坂さんは、富士山が好きでたまらないといった様子のあふれた楽しい方。今回ガイドをお願いしたのは、東武練馬駅南口からほど近い商店街沿いにある「下練馬富士」です。
さすがに身軽な有坂さん、サッサッと富士の小山を登っていきます。 「富士塚にはいろいろな規模とタイプがあって、ここは中規模で、とても手入れがいいですね。富士塚は江戸時代以降各地に作られましたが、『富士講』と呼ばれる信仰グループの子孫が残っているところでは、今も継続して富士塚をケアしています。解散した場合、氏子やその神社の宮司さんが手入れをすることになります」
2008年12月に上梓した『ご近所富士山の謎』も、ユニークな視点から各地の富士塚が紹介されています。「学者さんの話とは違う観点で、富士塚を見ても知ってもいいと思います。その方が楽しいし」と、有坂さん。実際、何度足を運んでもその度に新たな発見があると言います。
「下練馬富士では、この猿の石像が好きです。とっても人間らしい表情をしていますよね? 行ったことないのに、バリ島の石像をイメージできるのが面白いですね。最近、ここの烏帽子岩を見つけましたが、ホント宝探しみたいで面白いですね〜♪」
「富士塚には基本構造というものがあって、まず土を盛った円錐状の斜面が必要。山ですからね。今はダメですが、より本物に近づけるため、頂上に富士山の土を乗せたそうですよ。次に登山道とお中道をつけて、富士山の土台が完成します」
「他に4つのパーツがそろって初めて、正式な富士塚になるんですよ。まず頂上に『奥宮』。そして7合目辺りに『烏帽子岩』、5合目の右側に『小御嶽神社の祠か石碑』。さらに山裾の右側に『胎内』として洞窟があれば完璧! ここは開祖とされる長谷川角行が、修行のためこもった穴といわれているんですよ」
下練馬富士には…胎内のかわりに角行の石像があってユニークですが、全パーツがそろっていました! ちょっとした予備知識があると、富士塚登拝の楽しみ方がグンと広がりますね!
アートも今は富士オンリー 富士のパワーに呼び寄せられて
富士塚ツアーガイドとしても知られる有坂さんは、アーティストとしての顔もお持ちです。大学卒業後、アート活動のため渡米。ボディペインティングなど大胆なパフォーマンスを手がけてきたそうです。
「ナスカの地上絵のようなアースワークといいますか、とてつもなく大きいものを創ってみたいという思いはずっとありました。かつて滞在中のアメリカで日系人の新年パーティーがあり、そこで日本に帰国できない人たちのために鳥居を作ったら、「これで初詣ができた!」と喜んでもらえました。そのとき『かたちを通して、本当の気持ちを再現できるんだ』と気づきました。コンセプトといってもいいですね。この発見が、私の中で富士塚の理念とピタリと合ったのです。以来、創るのは富士山ばかり(笑)」
本当の富士山に登ったのは過去2回。2度とも夜中に、印象深い体験をしたそうです。満天の星が、突然目の高さまで降りて来てまたたき始めたこと。また、頂上の山小屋から窓越しに真っ暗な火口が見えたとき、「あそこはこの世じゃない」と感じて鳥肌が立ったこと。やはり富士山には、霊力があるのだと感じざるをえないと有坂さんは言います。
「アートにしても富士塚巡りにしても、自分にしかできないことをしたいです。自分なりの発見や表現をすることが喜び…なんてね。あ、もしかしたら富士のパワーに動かされているのかな?(笑)」 |
 ユニークな視点で富士塚が楽しめる 『ご近所富士山の謎』 講談社+α新書
 下練馬富士 (浅間神社:北町2-41-2) 鳥居の左側、こんもりとした 植え込みの奥が富士塚。 いつでも登拝できます。
 下練馬富士の配置図
 昔は、富士山の溶岩を運んできて 富士塚を造りました。 レクチャーするときに指す棒は 先端が磁石になっているので、 鉄分を含んだ溶岩にだけ くっつくんですよ!
 一対の猿の石像。 どちらも人間っぽくどこかユーモラス
 手入れが行き届いている 富士塚では さわやかな風が吹くと 言われています。 頂上の奥宮で、さぁ〜とそんな風が 吹きました。
 江古田富士 (茅原浅間神社:小竹町1-59-2) 登拝は年3回。正月三が日、お山開きの7月1日、例大祭のある9月第2週の週末です。 (撮影:有坂蓉子)
 大泉富士 (八坂神社:大泉町1-44-1) いつでも登拝できます。 (撮影:有坂蓉子)
 富士塚を語れば、 ついつい笑顔がこぼれます♪ |