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プロフィール

石倉多計子さん

1944年生まれ。江東区深川出身。18歳の時、練馬に転居。学生時代には建築を学び、教職を取得。会社勤めをした後、近所の保育園に転職。そこでの子どもと過ごす楽しさを知り、27歳で国家資格を取得し保育士に転身。出産や介護のため保育士の仕事を一旦離れるが、58歳で区から保育ママの声がかかる。まちづくりの大切さに気づき、「どうぞの会」「公園づくりの会」を立ち上げ、その後、自宅を活動拠点とした「どうぞの会」を運営母体に、幼児教室・一時預かり保育「こどものいえ てとてとて」 「育ちあいの寺子屋」「練馬こども笑店街」など、まちと子育てをつなげる団体をいくつも立ち上げてきた。2016年11月から小規模保育園の園長に就任。

練馬こども笑店街

ねりま人キラリと光るねりま人にインタビュー

乳幼児期は人生の土台
遊びから、本能を呼び覚まそう


 地元、練馬駅周辺で子どもやママたちから「いっちゃん」と親しまれる、保育士の石倉多計子さん。住宅街にある一軒家のご自宅を「どうぞの会」の活動拠点として、幼児教室や一時預かり保育を行う「こどものいえ てとてとて」を運営してきました。現在は、ママたちやサークル活動の交流の場として開放しています。

 取材に伺うと…。1階は、壁一面の本棚と本物志向のおもちゃや楽器が詰まっていて、子どもの遊び場としても、ママたちのおしゃべりの場としても、楽しく居心地のいい空間でした。

 2階の1室は、一時保育のために改造した忍者屋敷でした! 木登りしたり、隠れたり、手裏剣を投げる障子、吹き矢と、子どもが喜ぶ仕掛けでいっぱいです。

「ここでは、禁止の言葉は使わないの。触ってほしくない場所にはおもちゃのヘビを置いて『ヘビさんがいるから触れないね』と教えると、子どもたちも考えます。乳幼児の自ら育つ力を育てることが一番大事。知識より知恵と体力を身につけて、どこでも生きていける賢く豊かな人間に育ってほしいですね」

 長年の保育の経験から、遊びながら子どもの力を伸ばしていく石倉さん。「子どもをいっちゃんに預けたい」と思わせる、安心感があります。転ばぬ先の杖で、危ないことを子どもにさせない人が多いけれど、それでは危機管理能力が育たないと言います。

 地域に赤ちゃんが安心してぴちゃぴちゃ水遊びできる公園がない、どんぐりのなる木がないと気づき、2007年に「公園づくりの会」を立ち上げ、陳情に行きました。しかし、大掛かりなことで、なかなか思うように進まず…。

 そこでめげないのが、石倉さんのパワー。水遊びなら何とかできる! と、豊玉さくら公園に特大プールを持ちこみ、どじょうやザリガニを手づかみする「水まつり」を企画。大好評のイベントで、2016年には第7回を数えるまでになりました。

「清潔すぎるのも考えもの。赤ちゃんが何でもなめるのは、雑菌を体にとりこみ強くなるためでもあるんです。『消毒用の薬品のほうがこわいのよ』と言うと、ママたちは納得します」

 公園にいると、子育て中のママから相談されることが多くなり、関わった親子みんなを集めてお楽しみ会(2001年)を開催することに。それが「どうぞの会」となり、石倉さんの自宅の一部を解放して活動を続けています。



思春期のつらい経験…
子どもから生きる力をもらった


 72歳になった今も、何かに突き動かされるように、保育の活動や勉強を続ける石倉さん。その根底には過去の頃のつらい体験がありました。

「優しかった母が15歳の時に亡くなり、つらい思春期を過ごしました。大人になって、たまたま保育園で働くよう声をかけられたことが、まさに運命でした」

 子どもたちと過ごす時間が楽しくて、「これをしたら喜ぶかな?」「明日は何をしようかな?」と考えるのが生きがいに。思い悩んでいた自分が、子どもたちから生きる力をもらった…、そう振り返る石倉さん。

 数々のイベントや団体を立ち上げ、運営をしてきたことについては、「ボランティアでやっていて、私が死ねばおしまいじゃダメなんです。若い人に託していかないと」と思いを継いだ人の手に渡しています。

 2016年11月から小規模保育園の園長に就任。そこでも石倉さんは、保育についての哲学を語りました。見学に来ていたママたちが感涙しているのを見て、乳幼児期の保育が今後の人生の土台になることを伝える大切さを再確認したそうです。

「『やる気』が人間として一番大事だと思っています。自分自身を支える哲学を、ひとりひとりが見つけてほしい。未来を信じられる子どもを育てたいと思ったら、まず子どもから憧れられるような大人になることが必要」と石倉さんは語ります。

 今後は「昔でいう集落のような、まちの居場所、核をつくるのが目標」とのこと。保育と地域をやわらかい心で結びつけながら、石倉さんの活動はまだまだ続きます。

(2016年12月26日)

2階の「忍者の部屋」では
木登りしたり、ぶら下がったり、
子どもたちは夢中で遊びます


木のぬくもりのあるおもちゃ、
楽器、絵本や児童書など…
1階のスペースも魅力的


豆をつまんだり、選り分けたり。
幼児教室は少人数にこだわって
次の段階を見極めて
教具を整える。
感覚・言語・数の土台づくりに
つながる
(写真提供:石倉さん)


豊玉さくら公園で開催している
「水まつり」の様子。
遊びながら人間としての本能を
取り戻してほしいと言います
(写真提供:石倉さん)


砂場遊びに夢中の子どもたち
(写真提供:石倉さん)


手がけたイベントは数知れず。
子どもを中心に地域や人を
つないでいます


2011年より立ち上げた
「練馬こども笑店街」。
現在は若い世代に実行委員会の
運営を任せています


壁一面の本棚は圧巻!
保育にかける石倉さんの思いが
詰まっているかのようです